売上は、速さへの願望ではない
速いほうがよい、はまだ売上ではない。宅配は薄く、送料無料は費用が消えたという意味ではない。払う意思が高いのは、遅れたときの代替が高い需要である。密度と便数が、固定費を何件で割るかを決める。架空の市場価格は要らない。
送料無料は、費用が消えたという意味ではない
宅配は、件数は多く、一件の利幅は薄い仕事である。世帯が見る価格は、費用の積み上げと一致しないことが多い。国土交通省の再配達のページは、サイトに送料無料とあっても、配送には実際に費用が発生する、と明記している。その費用は、商品の利幅か、会員の料金か、出品者の手数料の内側で払われている。請求書が移動したのであって、ゼロになったのではない。無料の表示を、需要の証明として読むと、支払い意思を読み間違える。
同じページは、宅配件数を平成二十二年度の約三十二・二億個から、令和五年度の約五十・七億個へ増えた、と置いている。件数の伸びは、利幅の伸びではない。件数が増えれば固定費は薄まることもあるし、混雑と受け渡しの失敗が増えることもある。件数だけでは事業は読めない。多様な受け取りは、売上の仕組みの一部でもある。ロッカーか置き配は成功率を変え、成功一件の費用を変え、無料の内側で補っていた額を変える。
再配達率の調査を説明するページは、二〇二六年三月の総合物流施策大綱が、多様な受取方法の利用率を、令和七年二月の二十五・六パーセントから、二〇三〇年度までに五〇パーセント程度へ上げる目標を置いた、と述べている。これは政策の目標であり、私はの予報ではない。目標が示すのは、受け取りの形が、労働と費用の政策変数だということである。ドローンの投下も、受け取りの形の一つである。成功する場所が先になければ、速さは売上にならない。
支払意思は、遅れたときの代替で決まる
支払意思は、飛行の浪漫ではなく、買い手の代替で決まる。傷む検体、今日の判断を変える薬、明日まで船が出ない離島、部品待ちで止まったライン。買い手は、あなたの価格を、待つ費用と比べている。これらは道徳的に上の客ではない。代替が高い場所であり、高い価格が、費用の積み上げを消さずに成立しうる場所である。成立するかどうかは、代替を紙に書いてから判断する仕事であり、機体の写真から判断する仕事ではない。
代替が、すでに戸口を通る密度の高いバンであるとき、空の数分に払う意思は、その数分の差でしかないことが多く、しばしばゼロに近い。世界銀行の物流指標は、確実さと速度が場所によって大きく違う、と思い出させる道具である。ある都市で普通のサービスが、別の場所では稀少である。値段をつけるのは稀少さに対してであり、機体に対してではない。ここで、これらの需要の市場価格を発明はしない。方法だけを残す。
方法はこうである。買い手の次善を、遅れと失敗を含めて書く。その次善を避けるために、相手がすでに何を払っているかを書く。あなたの便が削るのは、その遅れのうちの何分か、何日か。削れない部分、たとえば院内の手続きや港の通関は、売上の根拠に入れない。削れる部分だけが、価格の上限の候補になる。下限は、前の章の成功一件の費用である。上限と下限のあいだにしか、嘘のない価格はない。
損益が合う地点は、固定費を成功件数で割ったところにある
成功一件の費用は、期間の固定費をその期間の成功件数で割ったものに、成功一つあたりの変動費を足した形で言える。売上一件は、それを覆い、さらに資本が要求する残りを覆う必要がある。覆えなければ、誰かが便を補助している。一日の固定費を F、成功一件の貢献、つまり価格からその成功を生む変動費を引いたものを c とすると、その日に必要な成功は少なくとも F 割る c である。便が少ないと、一件が担う固定費は上がる。便が多くても、需要と天候と許可が実際に埋まらなければ、分母は増えない。
仮定である。ネストの一日の固定費を四万円、一件の貢献を八百円とする。損益が合う成功は五十件になる。四万を八百で割った数である。二十五件しか成功しない日は、固定費だけで一件千六百円になり、八百円の貢献では覆えない。四万や八百を変えれば、件数は動く。教訓は、この円ではなく、割り算である。この数字を、誰かが観測した市場の価格だと書いている資料はない。私はも、そうは書かない。
密度は、この式の外側にある別の制約である。バンは、一時間の停車が増えるほど停車あたりの費用が下がる。混むまでの話である。一宅に一機の航空機は、その束ねを、設計しない限り持たない。ロッカーのある密集地では、バンの束ねが勝ちやすい。長い空車、離島、塞がった道では、航空機の空の往復でも勝つことがある。代替の時間が、費用の本体だからである。どちらの土地かを書かずに、便数の目標だけを書く計画は、式の半分しか持っていない。
- 国土交通省、宅配便の再配達削減に向けて
送料無料でも配送費用は発生するという記述と、平成二十二年度約三十二・二億個、令和五年度約五十・七億個という取扱個数。
- 国土交通省、宅配便の再配達率サンプル調査
二〇二六年三月の大綱が、多様な受取の利用率を二十五・六パーセントから二〇三〇年度に約五〇パーセントとする目標を置いた、という説明。
- World Bank, Logistics Performance Indicators
速度と接続が場所によって違うことを、国の供給網の指標として見る入口。支払い意思を都市の平均で一つにしないため。